わたしと明日のおしゃれなカンケイ

スタイリスト&エッセイストの中村のんの日々、印象に残った出来事。

震災後、はじめてのことたち

未曾有の災害の日から10日が経ちましたが、世の中は騒然としたままで、直接の被害は受けていない人たちも、悲しみに包まれたまま、喪に服したような心持ちで過ごしている春です。
仕事のキャンセルが相次いだこともあって、集中力が湧かない、心から、楽しむ気持ちになれない、そんな気持ちを抱えたまま、ほとんどの毎日を、家の中で過ごしていました。でも、どこかで、いかんいかん、こんなままでは、日本を復興させる、大河の一滴の立場としても、モチベーションを上げていかなければ、そんな焦りも感じる毎日でした。




3月22日は、私が講師をつとめる東京モード学園の卒業式でした。
卒業式を自粛する大学も多いようですが、これから社会に飛び立つ教え子たちの笑顔に会いたくて、おめでとう、を言いたくて、式を終えたあとの教室に向かいました。
震災後、はじめて見た、学生達の屈託のない笑顔から、元気をもらった。
でも、みんなと、この教室で会うのも、今日が最後。
だけど、縁は、もう繋がってるから。でも、縁を継続させてくには、お互いに、時々、声をかけ会わなくてはね。

「先生、一緒に写真を!」とかけてくれた声、うれしかったよ!




3月24日、外食好きの私なのに、震災後、一度もゆっくり外食をしていないことに気がつきました。
そこで、3月24日、仕事で青山に行ったついでに、3月20日に、骨董通りにオープンしたばかりの、パンケーキのお店、APOCに立ち寄ってみました。

まずは入り口で、お祝いとして贈られた、センスのいい、たくさんのお花を目にして、「お花って、いいな、素敵だな」と、あまりにも当たり前のことを、深く深く感じました。しかも、このお花たちには、混乱の中で、お店を開店させた、オーナーの大川雅子さんへの、愛が、いっぱいつまってる。

照明を節電した、まだピカピカの清潔な厨房で、パンケーキを焼く大川さん。

ほどよい甘さが、心に染みるパンケーキ。

いっただきまーす!


「明日は息子の小学校の卒業式なのよー」、大川さんと、おしゃべりしながらくつろぐひとときからも、以前は、感じなかった、貴重ないろいろをもらいました。改めて、大川さんが天然にもってる癒し系オーラって、素敵。そして、だからこそ、大川さんが焼くケーキには、心を癒す力がこもってるんだな、とか。

APOC  03-3498-2613 港区南青山5−16−3 2F




震災後、寝る前にずっと眺めていたのは、荒木経惟さんの写真集『チロ愛死』
愛と死を、やさしく、深く見つめる荒木さんの視線を必要とする私であり、共鳴したい私だったのだと思います。

3月26日、震災後、はじめての仕事が、その荒木さんとの撮影であったことは、うれしいを通り越して、私の気持ちが引き寄せてしまった必然のようにも感じられました。
「絶望を知らなきゃ、本当の愛を知ることはできない」なんて、大声で言いながら、シャッターを押すパワフルな荒木さんの姿を見ていたら、涙があふれてきそうになりました。

そして、『チロ愛死』にいただいたサイン。一生の宝物にします。