わたしと明日のおしゃれなカンケイ

スタイリスト&エッセイストの中村のんの日々、印象に残った出来事。

ファッションで時空を旅する「KEITA MARUYAMA EXHIBITION」

「好き」を仕事にすること、それを継続してゆくこと、ましてその仕事の中で「好きな世界」を維持してゆくことが、どんなに嬉しく素晴らしいことであるかと同時に、どれだけ大変なことか、それは身をもって痛感していることでもあります。
しかも、今の日本のファッション業界において、個人の「好き」と「経済」を結びつけてゆくことが、どんなに困難なことか、とくに作り出すものに、夢が溢れていればいるほど。
そんな気持ちの背景をもって、4月11日に行った、ケイタ・マルヤマのエキシビション。前回はお芝居仕立てだったけど、今回は、ファッションムービー。
ケイタさんの素敵なドレスを纏った野宮真希さんの歌姫姿と、無声映画時代の女優さんを彷彿とさせるヘアーメイクで、アンニュイなポーズで登場するモデルさんたち。
ヨーロッパとも、チャイナともとれる雰囲気は、まさに古き良き時代の租界を思わせる。
そう、浮かんでくるのは『上海バンスキング』そんな時代。私も恋い焦がれる時代。

開催された麻布迎賓館は、建物自体、ケイタさんの世界にピッタリだったけど、部屋の隅々にまでケイタさんテイストの飾り付けが。

大好き!着たい!そそられる服を纏ったマネキンたち。
90年にデザイナーとして独立してからずっと「好き」を維持し続けているケイタさん。ケイタさんが愛する時代、愛してやまないディテールたち。そこを原点とするクリエーションに大きな拍手を送りたい気持ちに。

招待状に書かれていたコピー。

「”ぼくらが旅に出る理由”
遠くまで旅する恋人に あふれる幸せを祈るよ
ぼくらの住むこの世界では太陽がいつものぼり
喜びと悲しみが時に訪れる」


ファッションは、「それ」を纏うことで、時空を超えて「好きな世界」に連れてってくれて、「なりたい自分」になれるものでもある。
実用だけじゃなく「夢」や「あこがれ」に近づけるツールでもある。
たとえば「男装の麗人になってみたい」とかね。
そんなことを改めて思った今回のケイタさんのエキシビションでした。