わたしと明日のおしゃれなカンケイ

スタイリスト&エッセイストの中村のんの日々、印象に残った出来事。

「女たち」からエナジーをもらった日

今月に入っていきなり慣れない毎日を送っていました。
母を連れての病院通い、そして、心配をためながら、目の前の現実をこなす日々を送っている中で、このとこ自分がちゃんと呼吸していないような気持ちになってきました。私にとっての呼吸、それは、美しいものや魂のこもったアートに感動することだったりします。
気が付けば、手が乾燥して指がささくれ立っているだけでなく、心も美味しい水をごくごく飲みたがってる、そう思って、昨日は感動を共有するのにふさわしい大好きな友達と一緒に、「観たかったものを観る」「行きたかったところに出かけてゆく」一日を過ごすことにしました。

まず最初に行ったのは世田谷美術館のこの展示。
http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/exhibition.html


会場に入った途端、友達と同時にうわ〜!と声をあげてしまいました。
繊細な刺繍やレースやゴブラン織りやジャガード織りや、タフタにオーガンジー等々。贅を尽くした手仕事で作られた美しいドレスの数々に何度もため息が出ると当時に、
時代とともにシルエットが変わっていったドレスの歴史は、フランス革命以降、どんどん解放されていった女性の歴史でもあることが、わかりやすく伝わってきて、
まさにこの展示のタイトルである「ファッション史の愉しみ」を堪能しました。
アレキサンダー・マックイーンも、ヴィヴィアン・ウエストウッドも、アルベルタ・フェレッティも、素晴らしいデザイナーたちのアイデアソースの多くが、この当時の貴族の衣装からのものであることは言うまでもありません。


世田谷から移動して江東区の東雲へ。

TOLOT/heuristic SHINONOMEで開催されている、何が何でも観たかったアニー・リーボヴィッツの写真展「WOMEN NEW PORTRAITS」へ。
http://www.heuristic.com/tolot/

今回の展示の被写体はすべて女性。
被写体となった女性たちの生き方や魂に深いところで共感し、リスペクトして撮られたアニーの写真はどれをとっても、「女性」である私の深い部分にストレートに響くものばかりで、「形として美しい」、それ以上の大事なものが伝わってきました。
その中の一枚、雑然とした仕事部屋にいる女性に惹かれたので、この人についてのテキストも撮ってきました。
グロリア・スタイナム(著述家/活動家)「半世紀にわたってアメリカのフェミニズムを代表してきた」とあります。
被写体のプロフィールを読むと「活動家」という肩書きが多いことも印象的でした。



アウンサンスーチー

大好きなヴァージニア・ウルフの机にも感動し

大好きな写真家、シンディ・シャーマンの仕事場でのポートレートも嬉しかった。


倉庫のような会場に設置された大きなスクリーンに映し出される作品の数々も圧巻のため息ものばかりでした。
これはステラ・マッカートニー



1980年、ジョンが撃たれる数時間前に撮られた歴史に残る有名な写真。

この写真をじっくり眺めたあと、写真展会場を出て、スマートフォンを開いたら、オノヨーコさんが病院に救急搬送されたニュースが飛び込んできて動揺しました。
でも、その直後に、回復されたことも伝わってきて、ほっと胸をなでおろしました。
十代の頃から、もっとも注目し、もっとも尊敬してきたヨーコさん。
2月18日に83歳になられたヨーコさんは、たしかに高齢ではあるけれど、ジョンの魂を伝え続けてゆく役目もまだまだ残されてるし、世界に向けてヨーコさんの言葉をもっともっと発信し続けて欲しいと切に願います。



東雲をでて、今度は渋谷へ。
これもどうしても観たかった、大好きなケイト・ブランシェットと、「ドラゴンタトゥの女」で、その存在感と演技に感動したルーニー・マーラ共演の映画。
http://carol-movie.com/

太陽がいっぱい」のパトリシア・ハイスミスが実名出版できなかった大ベストセラーを映画化、60年以上封印されていた愛の名作、ついに解禁!

とあるこの映画のテーマは、ズバリ女同士の恋愛!

時代は1952年、私が生まれる前のこの時代のケイト演ずるキャロルのファッションは、衣装だけでもこの映画を観る価値ありのため息もの。

1952年といえば、まだまだ同性愛がタブー視されていた時代。

そんな時代、エレガントなスーツやワンピースやコートに身を包んだ夫も子もあるキャロルが、自分の心の奥底を見つめ、微妙な変化を遂げながら、愛に目覚め、正直な生き方を探ってゆく様子に、最初から最後まで、サスペンスを観ているようなドキドキ感を味わいました。



「観たかったもの」をハシゴしたら、たまたまどれもが「女性」をテーマにしたものばかりだった昨日。
フランス革命の時代から現在に至るまで、数知れない女性たちの歴史や人生を一気に駆け抜けた感もある一日でした。


世界中の誰一人残らず、生まれてきたのは「女性のお腹」から。
私を生み育ててくてた母の老いに向き合う毎日の中で、母を大事と思いながらも、乾き気味だった私の心に、「女性である」ことにもがきながら、それでも自分に正直に生きてきた女性たちがエナジーをもたらしてくれた感じの昨日でした。


充実した一日を一緒に過ごし、感動を分かち合ってくれ、
「感動することは、のんさんにとって、呼吸することと同義語ですから」と言ってくれた素敵な愁子ちゃんは、私が撮ったこの写真を気に入って、フェイスブックのプロフィール写真に設定してくれました。

愁子ちゃんが撮ってくれた私。この写真、すごく好き。
私たちも、まさしく「WOMEN」!



単に「いい人」なだけじゃなく、その人のマインドを、知性を、センスを、リスペクトしたくなる、そんな女友達をもてていることは幸せなことだなーと、改めて思った日でもありました。


どんな時代でも、戦争をしたがるのは男。
女性の愛とパワーをもっと世界に、これからの未来に!

そんな思いも膨らみました。