わたしと明日のおしゃれなカンケイ

スタイリスト&エッセイストの中村のんの日々、印象に残った出来事。

さよならPARCO

本日2016年8月7日をもって渋谷パルコが43年間の幕を閉じます。
そのファイナルを飾るオバンドスによるライブに昨日、行ってきました。

渋谷の公園通りにパルコができたのは1973年。その翌年、私は公園通りを登りきったところにある桑沢デザイン研究所に入学しました。
通学路にあるパルコは、できたてホヤホヤのピカピカで、ビルそのものも、中に入っているショップも新鮮で、覗かない日はないといっても過言ではありませんでした。

とりわけ新鮮だったのは、パルコのポスター。
石岡瑛子さんをアートディレクターに、横須賀功光さんの写真や山口はるみさんのエアブラシのイラストが使われたポスターは、この時代を代表する広告として今も語り継がれています。

季節が変わるごとに新たに貼られるポスターはセンスがいいだけでなく、常に女性にたいする新しい時代へのメッセージが込められていて、グラフィックデザインを学ぶ学生としても、これから「素敵な大人の女性になりたい」という女の子としても、目にするたびにワクワクドキドキしたものでした。


先月7月には、パルコミュージアム山口はるみさんのポスター展が開催されました。
十代の頃には雲の上の遠い遠い憧れだった山口はるみさんと、今は「お友達」と言える関係になれていることはとても幸せなことです。
しかも、こうしてパルコの中で、はるみさんが描いたポスターをバックにツーショットを撮らせていただけたことには感無量。


渋谷パルコは私にとって、服を買う場所であり、お茶を飲みに入る場所であったと同時に、文化的影響を受ける場所でもありました。
とくにパルコが発信する「寺山修司もの」には映像、舞台すべてに足を運んできたと思います。
寺山修司はパルコができる以前から、とっくに「時代の寵児」であり、アングラの大スターではあったけど、デザイナーブランドのファッションを目当てにやってくる女の子がほとんどな場から、寺山修司のクリエイティビティを発信するパルコの役割は、文化的な意味において、とても意味があり、大きかったと思います。


パルコ劇場で、伊丹十三さんと山口小夜子さんが出演された寺山修司脚本の『中国の不思議な役人』、そして、やはりアングラの旗手である唐十郎さん脚本&演出の『下谷万年町物語』は、とくに、今も忘れられない舞台です。



パルコ劇場には一度だけスタッフとして参加しました。
舞台『小夜子』、メインの衣装は山本寛斎さんで、スタイリストとして参加された師匠ヤッコさん(高橋靖子さん)のお手伝いとして参加させていただけたことは、一生の宝となる経験でした。


パルコ出版が出していた雑誌「ビックリハウス」の役割も、渋谷発の新しい楽しさ発信という意味に大きかったと思い出します。初代の編集長であった萩原朔美さんと、今、お友達になれていることも、光栄であり、嬉しいことです。


昨日、ファイナルのライブを行ったオバンドスのメンバーは全員がイラストレーターであり、また、パルコで個展をやったり、ウォールやパルコのフリーペーパーにイラストを描いたり、パルコが発信する文化に一役買ってきた人たちです。
パルコができた当時はまだ学生で、パルコが発信する文化に影響を受けながら独自の才能を発揮してきたクリエイターのバンドをファイナルにチョイスしたセンスが嬉しくて駆けつけました。

左から、なんきん、パラダイス山元しりあがり寿、なぎのたかひろ、安斎肇白根ゆたんぽ、高橋キンタロー、朝倉世界一、ミック・イタヤ(敬称略)

全員がもういいオッサンだけど(笑)学生時代と変わらない気分で、手作りの楽器で楽しんで演奏している姿に、そうよね、いくつになっても人生楽しまなくちゃね、とニコニコしちゃいました。
観ている人たち、全員がニコニコ、ファイナルにふさわしい大盛況でした!


楽しいライブが終わったあと、友人たちとレストラン街のテラス席のあるお店に入って「パルコ、ありがとう!」の乾杯をしました。オバンドスのメンバーのなぎちゃん(なぎのたかひろさん)もあとから交じりました。
初めて入ったお店で、夕焼けを眺めながらのその居心地がよく感激したので、「こんな店がパルコにあったんだね。また来たいね」と思わず言っちゃったけど、そうか、もうパルコに「また」はないんだなーとちょっぴりおセンチは気持ちにもなりました。
ここ十年、いえ、二十年は、頻繁に来てたわけじゃないけれど、「あって当たり前」「いつでも来れる」と思ってた場所が、しかも青春の思い出が詰まった場所がなくなることには、やはり一抹の寂しさを感じます。


食事を終えて外にでたら、徐々に什器の撤収作業が行われていました。

いつのまにか「R」の一文字がなくなっていたこのネオンもこれが見納めね、という気持ちで撮りました。

パルコ、そして、パルコが発信してきた文化に感謝を込めて。
そして、三年後に生まれ変わるパルコに期待を込めて。

2016年8月7日(日)



このブログを読まれたイラストレーターの那須慶子さんから教えていただいたことを加筆します。

「昨年末にChim↑Pom展で、CとPを取り外して、展示、今回のRの所在は、映画シン・ゴジラとタイアップで、右上にいるゴジラの手にあります。」

この写真は那須さんが送ってくださったものです。

パルコって、やっぱり粋なことするなーと、最後の最後に、また感動しています。