わたしと明日のおしゃれなカンケイ

スタイリスト&エッセイストの中村のんの日々、印象に残った出来事。

丸山敬太の夢の世界

宇野亜喜良さんのイラストのインビテーションカードが届いた時点から期待に胸をワクワク膨らませていた丸山敬太さんのコレクション

KEITA MARUYAMA 2017 SPRING&SUMMER COLLECTION「何れ 菖蒲か 杜若」と題されたインスタレーションが、昨夜、リニューアルされたケイタさんのショップ、丸山邸で行われました。



芝居小屋を覗くような気分で黒いカーテンをめくり、細い入り口を入ってゆくと、仄暗い灯りの中に、なんとも甘美な、妖艶な世界が現れました。


人が、あるタイプの大人の女性に向かって「◯◯さんはまるで少女みたいですね」的なことを(褒め言葉として)言うとき、その「少女」の定義は間違ってる、少なくとも私にとっての「少女」の定義はそれとは違う、と思ってきました。

「少女」とは、今ある現実に退屈してて、不機嫌で、美しいものしか受け入れられなくて、夢の世界に逃避するのが得意で、刹那な存在。
まさに私が思い描くそんな少女の世界が目の前にあることに興奮しました。

好きな物だけを集めた自分の部屋で、物憂げにくつろぐかのようにポーズするモデルたち。

服を見せることを目的としてランウェイを闊歩する従来のファッションショーとは異なる新鮮な形式でした。

しげしげと眺めてもいいのかどうか…眺めることを躊躇してしまうような、「女の子の聖域」を見ているような気持ちになりました。


「服をデザインするときは、言葉から入る」というケイタさんのショーでは、毎回、ケイタさんのアイデアソースとなった言葉がちりばめられた紙が手渡されます。
それを読むのも毎回楽しみのひとつです。


小屋をでて(「コレクションを見終わって」ではなく、敢えて「小屋をでて」と言いたい)、興奮しながらケイタさんに「大好きな世界!」と言ったら
「知ってる〜(笑)」と言われました(笑)

この日、私が着て行ったのは、70年代にロンドンで作られたシノワズリのビンテージ、裏が黒の無地のリバーシブルのコート。それに韓国の手刺繍のブローチとコットンパールのブレスとピアス。
どれもケイタさんの商品ではないけれど、ケイタワールドリスペクトの思いから。
以前、ケイタさんにも褒めてもらったけど、昨日は、受付をされていたケイタさんのスタッフの方から「どこのですか?素敵ですね」と、目を止めてもらえてうれしかった。



世の中全体が経済優先、実用優先の方向にどんどんいってて、ファッション業界も御多分にもれずの今、ファッションで夢を売ることがどんどん難しくなっていることを職業柄、目の当たりに感じています。
そんな中でも「夢みること」を大切に服を作り続けているケイタさんは、「日本のファッション界の宝物」、心底そう思います。

そして、ファッションって、自分を魅力的に見せてくれる服を着ることだけじゃない、
テーブルや椅子や本や、窓やカーテンや、鳥籠や花やガラス瓶や、etc etc、
この世にあるものすべてに美しさを見出す心にある、と教えてくれるケイタさんの世界に触れることは、とっても貴重。(私にとっては、改めて思い出させてもらえる感じ)



最後に…
ショーが終わったあとに、ケイタさんがフェイスブックに投稿された文章が、深く心に響いたのでここに引用させていただきます。


コレクションの後は、いつも祭りのあとのような寂しさがある。
たくさんの美しい物や、かっこいい物を創り出そうとしている志をもった人々が集まるとうれしい。
普段感じている閉塞感や、伝わらない歯痒さや、仕事に愛も想いもない輩との、無駄な闘いがすっかり流れていって、半年ぶりだったり、初めてだったりするのに、勝手に同志みたいな気持ちになる。
ありがとう。

そして、本当に美しい物、可愛い物、誰かのためになるもの、
愛に満ちた丁寧な仕事、夢、喜び、
もうそんな事だけで人生を紡いでいきたいと強く想う。
そう宣言。