わたしと明日のおしゃれなカンケイ

スタイリスト&エッセイストの中村のんの日々、印象に残った出来事。

さようなら ありがとう ソニービル&ケイタ・マルヤマ、コレクション

3月31日、50年間の幕を閉じた銀座のソニービル
誰に言ってもすぐわかる待ち合わせ場所でもあった銀座の象徴が消えることに寂しさを感じます。

とくに個人的には、一階のパブ・カーディナルは、六本木の同店がなくなったあとの貴重な場所でした。

そのパブ・カーディナルで、3月23日に丸山敬太さんのコレクションが行われました。
ケイタさんのお洋服を楽しみにすると同時に、これが最後のパブ・カーディナルという気持ちで来たお客さんたちで、店内はギュウギュウの熱気の盛り上がりでした。

ケイタさんのショーは毎回演劇的で、お洋服はさることながら、目の前に広がる世界そのものにうっとりですが、場所柄、普段は会社帰りのお客さんたちで埋められることも多い店内が、レトロでアンニュイなモデルたちによって、フランス映画の世界のように。


パブ・カーディナルってなんて素敵なインテリアだったんだ、と改めて思いました。年季による汚れた天井も、擦り切れた階段も、色あせたソファの色も、年月を感じさせるバーも、すべては時間が創り出した美の味わい。これから作ろうたってすぐには作れないことを思うと胸が痛む気持ちにさえなりました。

そういえば、昨年の夏は、「さようなら渋谷パルコ」、そんなタイトルのブログを書いたっけ。
あって当たり前と思っていた思い出いっぱいの物が街から消えてく寂しさは、単にノスタルジーだけではないような気がします。
ケイタさんが創りだすお洋服は「温故知新」の大切さ、素晴らしさをいつも教えてくれます。
「その街ならではの文化を発信してきた場所」「多くのものを受け取ってきた場所」、そして「ひとつの美」が消えてゆくことへの寂しさなんだろうなと自己分析。
最後にソニービルに訪れた目的がケイタさんのショーだったことは、私にとって(きっと来た人全員にとって)最後を飾るにふさわしいことでした。


2月に行った「It's a Sony展」では半世紀以上にわたってソニーが創り出してきた技術、そしてデザインの美しさにも感動させてもらいました。

これは、1979年に発売された初代ウォークマン
発売されてすぐワクワクしながら買った気持ちを思い出しました。

さようなら、ありがとう、ソニービル。また会う日まで。

ソニービルの始まりはこんな風景だったんですね。