わたしと明日のおしゃれなカンケイ

スタイリスト&エッセイストの中村のんの日々、印象に残った出来事。

『繕い裁つ人』

三島有紀子監督、中谷美紀さん主演の話題の映画『繕い裁つ人』を観ました。
「お洋服をめぐるファンタジー」、そんな形容がぴったりな映画。

ストーリーなど、詳細説明に関しては専用サイトでチェックしていただくとして、

http://tsukuroi.gaga.ne.jp/

私なりの感想を。

「お洋服の仕立てや」が主人公の映画なので、正直いって、登場する服がイマイチだったら、いくらストーリーがよくても全編にわたってイライラしそうだなーと思いながら出かけて行ったのですが、その心配は中谷さんが登場する冒頭から吹っ飛びました。

中谷さんが住む家、着てる服、作る服、登場する生地やボタン、すべてのディテールが美しく、それらを生かす繊細なライティングの映像に女心がワクワクしました。

登場する衣装には誰がかかわってるのかなーと、エンドロールを楽しみにしていたら、やっぱり!衣装制作、伊藤佐智子さんでした。

日本映画って、ストーリーや演技に感動することはあっても、なかなか衣装に感動することってないだけに、服を愛する者としては、この感動はとても嬉しいものでした。

しかも、衣装だけでなく、インテリアや、小道具に至るまで、映画全体にちりばめられてるアイテムは、あたたかく懐かしい雰囲気のものばかりで、女性監督ならではの繊細なこだわりと、「物」への愛情が伝わってきてました。

そして、映像的に美しいだけでなく、美しいものを受け継いで、そこに「今の自分」「今の時代」の息吹を盛り込んでゆくことの大切さがメッセージされていて、今年の冒頭、「温故知新」をテーマに掲げた私の気持ちに強くフィットしました。

フワフワした浮世離れではなく、ストイックな浮世離れした雰囲気の役は、中谷美紀さん以外には絶対考えられないくらいハマリ役でした。
透明感いっぱいのアップの表情も、ため息が出るほど美しかった。

こちらの伊藤佐智子さんのインタビューもご覧ください。

http://www.cinra.net/interview/201501-tsukuroitatsuhito?page=2


映画を観た翌朝、やさしい感動の余韻を心に、リボン専門ブランド、MOKUBAのリボンの箱を取り出してみました。
こだわりをもって作り続けているMOKUBAのリボン、大好きです。


ボタンにこだわりをもって作る人がいて、
糸にこだわりをもって作る人がいて、
レースにこだわりをもって作る人がいて、
生地にこだわりをもって作る人がいて、
そしてリボンに、刺繍に、また、パターンに、縫製に。
たくさんの職人がいるからこそ作られる、
たくさんの人の思いがあるからこそ「一着の美しい服」が生まれる、
そのことを、いつも心においておきたいと、この映画を観て、あらためて思いました。