わたしと明日のおしゃれなカンケイ

スタイリスト&エッセイストの中村のんの日々、印象に残った出来事。

写真集『70’ HARAJUKU』

昨年の11月に行ったイベント「中村のんプレゼンツ『70's 原風景 原宿』がきっかけとなった写真集『70’HARAJUKU』が昨日8月25日、いよいよ出版されました!

2月に小学館から出版することが決まってから今日までの毎日は、一日たりとも写真集制作に関わらない日はなかったと言える毎日でした。


70’HARAJUKU (小学館SJ・MOOK)

70’HARAJUKU (小学館SJ・MOOK)

そしてまた、大勢の方たちに多大なるご協力をいただいたことで、人に感謝しない日もない制作の日々でした。

スタイリスト中村のんが、生まれて初めてディレクションした写真集、ここに関わってくださったすべての方たちに心からの御礼を申し上げます。

約40年前の貴重なお写真を掘り出し、快くご提供くださった9名の写真家の方たち。
染吾郎さん、横木安良夫さん、野上眞宏さん、井出情児さん、広川泰士さん、ハービー山口さん、達川清さん、ガリバーさん、石川武志さん
みなさんが送られた熱い青春の日々にも、心からの敬意と感謝を。

写真集制作は、まずはカメラマンたちに声をかけるところから。そして、集まった写真をアートディレクターの白谷敏夫さんとともに並べてみて順番を決めるところから始まりました。何度も何度も入れ替えながら、もっとも心にピタッとくるリズムを探しました。

最後の最後までワガママだった私を大きな器とやさしさで受け止めてくださった白谷さんが、筋金入りのサーファーであることは、関係ないようで、ものすごく関係あることでした。

「この写真集は、ある意味、のんさんの私小説」と言って帯の言葉を「ティーンエイジ・ガールのまなざしの、原風景、原宿」としてくださった小学館の尾崎さんのご尽力と奔走にも心からの感謝を。
尾崎さんと送ったこの半年間は、珍道中の旅ともいえる日々でした。

テキストの英訳を担当してくださったのは、『パティ・ボイド自伝』や『ジェフ・ベック 孤高のギタリスト』の訳者でもある前むつみさんでした。私と同世代の前さんは70年代原宿のロック喫茶「DJ Stone」の常連でもあった方なので、この写真集に込めた思いをものすごく理解し共感してくださったことが嬉しかったです。



最後の最後の作業は、8月12日に凸版印刷の板橋印刷所に、そして13日に川口の印刷所に、白谷さん、尾崎さんと印刷の確認に向かうことでした。

プリンティングディレクターを務めてくださったのは、その昔、リチャード・アヴェドンから、その技術にたいして直筆の賞賛の手紙もきたことがあるという凸版の野口啓一さんでした。

刷り上ったものをチェックされた野口さんの一言で刷り直されてきたものを見ると、魔法のようにみるみる変わってゆく写真。野口さんの「設計」は、写真を愛おしく思う人ならではのものでした。

本来は入ることのできない印刷の現場にも特別に入れていただきました。
アートディレクターの白谷さんも編集の尾崎さんも「初めて」と言っていました。
生まれて初めての写真集制作の過程でのレアな体験。小学生の工場見学のようなワクワクする体験でした。
真摯に印刷作業をしてくださった方とも記念写真を撮らせていただきました。


9月4日から開催するイベントのフライヤーをお渡ししたら、「え、藤原ヒロシさんもトークショーに…ファンなんです!」と、真剣な顔からいきなりリラックスの表情になられたのが印象的でした。
奥付にクレジットされない方たちの一生懸命さに触れることのできた貴重な体験でもありました。

印刷の上がりに満足して、尾崎さんから「OKサインはのんさんが!」と促されて、野口さんや印刷の方たちに見守れながら、OKサインを。気持ちよかった!嬉しかった!

「ハート付のOKサインは初めてです(笑)」と言われました。

作業を見届けて、印刷所を去ってゆく白谷さんの後姿に感謝の気持ちがこみ上げてきて、じーんとしました。



最後の作業が終わった翌日は、偶然にも表紙になった山口小夜子さんの命日でした。
6月まで開催されていた小夜子展の図録です。
高校生の頃から、一番のあこがれだった小夜子さん。

出版の前の日(8月24日)、小夜子さんのマネージャーさんにご挨拶に伺いました。
「この写真集の表紙になることは、小夜子さんも望んでいたことだと思います」と言ってくださったことに、思わず手を合わせてしまいました。

そして、出版前夜は、藤原ヒロシさんと丸山敬太さんとお食事をしました。たまたま三人のスケジュールが合うところがここだったのですが、
写真集のエピローグにも書いたように、
昨年の写真展にきてくださったあと、J-WAVEで「写真集を作るように、関係者に掛け合いたい」と、ヒロシさんが言ってくださったことも大きなきっかけでした。

そして、65年生まれのケイタさんは、東郷幼稚園〜神宮前小学校〜原宿中学という生粋の原宿育ち。ページをめくりながら「うわ〜、じーんとしちゃう」と、何度も何度も仰っていた様子に胸が熱くなりました。

そして、8月25日、店頭に並ぶ日!

小夜子さんと並んで表紙にも登場してくださった師匠のヤッコさん(高橋靖子)からの代官山蔦屋書店の様子。ヤッコさんの新刊『時をかけるヤッコさん』と並んで置かれています。

そして、友達のあっちゃんが撮ってきてくれた青山ブックセンターの棚。

10代の私にとっての、一番の憧れだった女性、小夜子さんとヤッコさんと。
人生はときとして、素敵な奇跡を起こしてくれる!
人生って、なんて素晴らしいんだ!
そんな気持ちがあふれている今日です。