わたしと明日のおしゃれなカンケイ

スタイリスト&エッセイストの中村のんの日々、印象に残った出来事。

贅沢貧乏な休日

11月28日、日曜日。
土曜の深夜、前々から行こうと思ってた二つの展覧会をネットで調べたら、どちらもあと1日しかやってないことがわかって、あわてて、最終日の今日、行ってきました。


ひとつは、世田谷文学館の『父からの贈りものー森鴎外と娘たち展』


鴎外の長女である、森茉莉は、私が一番好きな作家。
本棚にあるのは、30年くらい前に買った本。

とくに彼女の作品のタイトルでもある「贅沢貧乏」は、いつも心に留めておきたい大好きな言葉です。
幼少期には父、鴎外によって贅沢な暮らしをしていた茉莉だったけど、二度の離婚のあと、54歳にして作家となってからも、その暮らしは、下北沢の、風呂なしの安アパートに住むような、つつましいものだったのです。


でも、そんな茉莉の描く世界は、うっとりするような美しさで、それは、茉莉の心の中には、パッパと呼んでいた父から溺愛された幸せな思い出と、19歳〜たったの1年半だったけど、住んでいたパリで観た、美しいものたちが、いつだって溢れていたから。

鴎外、茉莉の自筆の原稿や手紙など、貴重な資料を、この目で見られて、「知」の贅沢さを、堪能しました。


100年以上前の時代に、娘二人と息子のために、子供服をドイツにオーダーしていたというエピソードに、鴎外の「こだわり」を見た思いでした。




そして、次に行ったのは、白金の庭園美術館の『香水瓶の世界』展。

夜の庭園美術館は初めてだったけど、ライトアップされた洋館が美しく、「美」を堪能するのに、ふさわしい雰囲気でした。

アールデ様式の建物の中で観た、コルネ・ラリックバカラなどの18世紀から今に至るまでの、香水瓶ばかり300点余りの展示。
思わず、隣にいた知らないおばさんと、顔を見合わせて「きれいねー」「すごいですねー」と、ため息まじりの感嘆の声を上げてしまいました。


二つの展覧会、併せて入場料、1700円!
お財布の中身は、心許ない私だけど、たったこれだけの金額で、「本当の贅沢」を味わえた気分に。
東京って、いい街だわ〜。。。。と、思ってしまった今日でした。