わたしと明日のおしゃれなカンケイ

スタイリスト&エッセイストの中村のんの日々、印象に残った出来事。

アレキサンダー・マックイーンに思うこと

5月31日〜7月31日まで、ニューヨークのメトロポリタン美術館で開催されていた
アレキサンダー・マックイーンの回顧展『Alexander Maqueen Savage Beauty展』は、
現地での動員数はもとより、日本のファッションフリークの間でも、大きな話題になっていました。
観たい、観たいと切望しながらも、いろんな意味で、そんな余裕などなかった私でしたが、この度、息子が、そんな私のために、図録をプレゼントしてくれました!
ものすごくうれしいサプライズ!
表紙は、マックイーンのポートレートと、マックイーンの象徴でもあるスカル(ガイコツ)の3D。
斬新な、そして、リッチなデザイン。

展覧会のタイトルになった「Savage」には、どう猛な、凶暴な、野生の、といった意味があります。
昨年2010年2月、まだ40歳という若さでこの世を去ったマックイーンは、その才能だけでなく、スキャンダラスな行動や発言でも、何かと話題になるデザイナーでしたが、その人物像と作品に、「Savage Beauty」は、もっともふさわしいタイトルです。
「売れ線狙いは絶対にしない」「金儲けには興味がない」と公言していたマックイーンの服には、誰にも媚びることなく、アヴァンギャルドでありつつも、クラシカルな要素がちりばめられています。

花や鳥といった自然界の物と人工的なもの、光と闇、そして、血と骨、愛と死、この世にある、あらゆる万物の美が、研ぎ澄まされた完璧なカッティングによって表現されているマックイーンの服たち。
うっとりすると共に、スリリングな気持ちになります。







コレが一番好み!とは選びきれないけど、私がとても心惹かれるのは、このチャイナ風のドレスです。

最愛の母を亡くし、その母の葬儀の前日に、謎の死を遂げたマックイーン。
天才イブ・サンローランは、「90年代に入って、ファッションは商売人たちの手に堕ちた」として引退しましたが、その魂を受け継ぐデザイナーとして、マックイーンの存在がどれほど大きかったことか…図録をめくりながら、改めて思いました。

マックイーン展は、今後、世界を巡回する予定だそうですが、その予定の中に、日本は入っていません。
ファッションを、「自分に似合うかどうか」「買えるかどうか」だけで、測りがちな日本人には、ファッションをひとつのアートとして捉える力が、今ひとつ弱いように感じているのは正直なところです。
それでも、本物を観ることを切望している日本人もたくさんいる。
いつか日本で、マックイーンの魂に触れられる日がくることを祈っています。