わたしと明日のおしゃれなカンケイ

スタイリスト&エッセイストの中村のんの日々、印象に残った出来事。

グザヴィエ・ドラン監督の最新作『Mommy/マミー』

カナダが生んだ弱冠25歳の恐るべき天才、グザヴィエ・ドラン監督の最新作『Mommy』
先月、カナダ大使館で開催された完成披露試写に続いて、今日は、算命占星学の大御所、中森じゅあんさんの「心のセミナー」付の上映会に参加しました。(一般公開は4月25日)

一度目に観て大感動して、二度目の今日、さらに深く感動して、その感動を書いておきたいと思いながらも、正直いって、うまく言葉が浮かんできません。

一度目も二度目も、本編上映前にドラン監督がカンヌ映画祭で審査員特別賞を受賞したときのスピーチの映像が流れました。

「僕と同世代の人たちへ。人は誰でも自由に表現する権利をもって生まれてきている。でも、それを邪魔する人たちもいる。でもどうかあきらめないで。僕がここにこうして立てているのだから」
魂のこもったその短い挨拶に、すでに感動の涙が溢れました。

光と影、風景、インテリア、衣装、言葉、音楽、色、人間、感情、物語、言うまでもなく映画はこの世にある感動のすべてを表現する最高芸術です。
この映画に関しての感想をどう書けばいいのか考えあぐねてしまうのは、このすべてにおいて、どこをとってもあまりにも深い映画だから。いや、深いと書いておきながら、「深い」という言葉も陳腐に思える。自分のボキャブラリーのなさ、言葉の不自由さを感じるのはこんなときです。

ドラン監督の作品の主人公は、『わたしはロランス』のゲイをはじめとして、いわゆる一般社会におけるマイノリティだったり、はみ出し者だったりします。
現実社会に生きづらさを抱えながらも自分らしくあろうと、もがきながら生きるそれらの人々に寄り添うドラン監督の、やわらかく、あたたかいまなざしに、どの作品でも胸打たれます。

今回の主人公であるスティーヴはADHD(注意欠如・多動性障害)と診断され、問題ばかり起こして、専門施設からも追い出されてしまうティーンエイジャー。

そして、その母親であるダイアンは、二の腕にタトゥを入れた学歴のない、黒人のタクシー運転手からも「ビッチ(このアバズレ女)」と言われてしまうようなタイプの女性。

いつ暴れ出すかわからない息子とやたらハイテンションで、頭にくると怒りの感情をむき出しにする母親、そんな親子がもしも隣に引っ越してきたらと思うと、親しくなりたいと思うタイプではないなというのが、初回に観たときの前半部分での正直な感想でした。けれどけれどけれど。。。。
人間とは、なんと愛おしく深い存在でしょう。
彼らの感情むき出しの、体当たりで人と向き合う姿が、見終わったあとに私に教えてくれたことは、形ばかりにこだわって、世間の目を気にしてばかりいる、私自身のちっぽけさでした。

受賞の挨拶で彼自身の言葉として述べたように、ドランの作品には一貫して
「自分自身を表現することをあきらめないで」
「自分を解放してもっと自由に」
「どんなときにも希望をもって」
というメッセージがこめられているように思います。
そして、そのメッセージは、台詞だけでなく、流れる音楽の中にも、映像そのものにもふんだんにこめられていて、痛みを伴う物語を目で追いながらも、自分をもっと開放したい、どんな形であろうが、生きている、そのこと自体が素晴らしい、という気持ちにさせられます。
個人的に、とくにぐっときた、語りたくて仕方がない大好きなシーンは多々ありますが、観る前のみなさんには、それぞれが観てのお楽しみとして、ここでは敢えて語らないことにします。


自分の監督作に、主役としても出演し、役者としての才能も発揮している25歳のグザヴィエ・ドラン、天は彼に二物どころか、三物も、四物もを与えられたと思わずにはいられません。

彼がこの先、どこまで成長するのか、楽しみでもあり、恐ろしい気さえしてきます。



上映後に行われた「心のセミナー」で、中森じゅあんさんは、「頭で考えるのではなく、心で感じること」の大切さについて語られました。
そして、3回観られたというじゅあんさんは、「この映画を一人でも多くの人に観て欲しい。感じて欲しい。ここにいる一人ひとりが回りの人に勧めて欲しい」と熱く語られていました。「私はこの映画に使われているのではないかと思うほど(笑)。この映画のためなら、何度でも、どこででも、こういう機会を設けたい」
35年以上にわたって、算命占星学の鑑定やセミナーを通して、人の真実の姿に触れてこられたじゅあんさんの、この映画に対する愛の深さと、熱意にも心打たれました。

↑これは、一回目の試写の帰りに、駅でばったりお会いしたときのじゅあんさんと私のツーショット。「素晴らしい映画だったわね。パンフレットを持って撮りましょう」と仰ったじゅあんさんでした。

実は、私とじゅあんさんの出会いは、私が22歳のとき。長年にわたって、人生の折々で助けていただいてきています。
今日の質疑応答のときに挙手して感想を言った私は、じゅあんさんから「それであなたはどう感じたの?」と何回が繰り返し言われましたが、実はこれは今日にはじまったことではなく、人生の折々で、自分に起こったことを語るたびに、「そのことをあなたはどう感じているの?」と言われ続けてきているのです。

外側で起こっていることは、単なる現象にすぎない。それをどう受け止めるかは、私たちの心が決めること。そして、心が決めたことが、私たちにとっての現実。

形の奥にあるものを感じること。真実に触れること。人にたいしても、自分にたいしても。そして、愛をもって受け止めること。人にたいしても、自分にたいしても。そんなフレーズが、すっと心に浮かんでくる時間でした。

ドラン監督と中森じゅあんさんに心から感謝します。
そしてこの映画を日本に紹介してくださった、また、今日のこの機会にお誘いくださった鈍牛倶楽部の國實瑞恵さんにも感謝します。


PS:
私と同じく、形にこだわる人へ(笑)
衣装的にも完璧であることをお伝えします。そして、音楽好きな人へ
泣けます!私はサントラを絶対買おうと思っています。

映画は4月25日〜公開です。
http://mommy-xdolan.jp/